「でも……」
一連の話を黙って聞いていた望月さんは戸惑った様子で。
そっと自分の手に触れてきた。そして、
「でも、もしそうだったとしても、だからって見て見ぬフリしていいわけじゃないと思う……」
涙を浮かべて言ったその表情に、言葉に、ドキッとする。
何でだろう……。
まるで心の中を見透かされてるみたいだ。
「ずるいな、望月さんは……」
せっかくカッコつけて強がろうとしてるのに、弱くさせる。
持ち前の優しさで心を裸にさせる。
「前原くん……?」
堪えきれなくなりそうで思わずうつむくと、本人は何もわかってない様子で、どうしたのとばかりに名前を呼んだ。
そんなところも含めて、本当にずるいよ。
「正直言うとさ……」
望月さんを悪く思ったりしてないし、いじめられたっていいと思ったのも事実。
だけど、
「望月さんがやめてって叫んでくれたとき、すごく嬉しかったんだ」
助けて欲しいなんて思っていたつもりはないのに、すごくすごく嬉しかったんだ。



