「望月さんは何も悪くないよ。もともと……いじめられるきっかけを作ったのは自分なんだ」
「え……」
唐突とも言える発言に、望月さんは戸惑った表情を浮かべる。
だけど、このことを伝えに戻ってきたと言っても過言ではなかった。
望月さんが責任を感じていること。
やめてと叫んでくれたとき、それを痛いくらい感じたから、ちゃんと話しておこうと思ったんだ。
「望月さんは日直の仕事代わってくれって、田澤くんに言われてたの覚えてる?」
「え、うん……」
「実はあの後さ、田澤くん戻ってきたんだ」
「えっ?」
思い返せば全部、あのときからはじまった。
あのとき……あの放課後。
『前原、お前代わりにやっといて』
押しつけるようにそう言って、部活へと向かった田澤くん。
でも実は、あの後すぐに戻ってきたんだ。
望月さんはちょうど掃除で使ったバケツの水を捨てに行っていて、教室にはいなかった。
だから、知るはずもないけど、
『前原、悪りぃ。やっぱり俺がやるよ』
戻ってきた田澤くんはそう言って、ちゃんと日直の仕事をやろうとしたんだ。



