「望月さ……」
「ごめんなさいっ!」
先生が出て行き、ふたりきりになった保健室。
声をかけようとしたその瞬間、望月さんは立ち上がって頭を下げた。
「ごめんなさい、本当にごめんなさい……」
謝る声も、スカートの前で重ねられた手も震えている。
「どうして望月さんが謝んの」
「だって……」
ポタッと床に落ちた涙。
「どうして」なんて聞きながら、本当は涙の理由を知っている。
「……助けられなくてごめんとかって、思ってる?」
確かめるみたいにそう尋ねると、望月さんは一度顔を上げて。
「うっ……」
こくんと大きく頷いた。
「前原くんと仲良くしてたくせに、あたしずっと……」
勢いを増す涙に遮られ、最後まで続かない言葉。
「望月さん……」
……本当は知っていた。
望月さんがずっと罪悪感に苛まれていること、本当はずっと前から気付いていた。
だからこそ教室では話さないようにしようと言ったり、自ら距離を置くようなことをしていたのだけど、それがまた望月さんを追い込んでいたのかもしれない。
そう思うと、今泣いている望月さんの姿を見ると、やりきれない気持ちでいっぱいになる。
でも……。



