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「レントゲンもCTの結果も異常はないので、特に心配するようなことはないでしょう」


病院の診察室。

目の前に貼り出された何枚もの自分の脳の写真を見ながら「はい」と、頷いた。


教室でクラスメートに絡まれて、突き飛ばされた拍子に机の角に頭をぶつけた。

激痛が走り、出血しているのに気付いたときは、さすがにどうしようかと思ったけど、切り傷くらいで済んだことにホッとする。


「ありがとうございます」


騒ぎを聞いて駆けつけ、病院まで付き添ってくれた担任の先生。

先生もまた安心した様子で、診察してくれた医師にお礼を言うと、処方された薬とこれからの注意点を聞いて、一緒に診察室を後にした。




「前原くん、ごめんね……」


先生は何も悪くないのだけど、何だかとても責任を感じているようで、こっちの胸が痛む。


「お母さんにはさっき連絡させてもらったんだけど……」


言いにくそうに口を開いた先生。


「本当なら今日はこのまま帰ってもらうところなんだけど、前原くん今日で学校最後でしょ? その……もしよかったら、話をちゃんと聞かせてもらいたいの」


「もちろん前原くんさえ良ければの話ね」と、心配した表情で続けてくれた先生に、


「大丈夫です」


一瞬の迷いもなくそう返事したのは、自分もこのまま帰るわけにはいかなかったから。