あ……さっきの。

あらかじめ振り分けられていたクラスに向かうと、入ろうとしていた教室の前にさっきの女子がいた。


同じクラスだったんだ……と、少し嬉しく思いながら、彼女の後を追う。

すると、どういうわけかその女の子は教室に入ったところで、ピタリと足を止めた。


どうしたんだろう……。


追い越すことも出来ず、かと言っていきなり話しかけることも出来ず、気付かれないように見ると、彼女の体は微かに震えていた。


あぁ……。

小学生にマフラーを貸してあげたから。
それで寒くて震えてるんだ。


「ふっ……」


思わず小さな笑い声が漏れたのは、本当に優しい人なんだなぁと思ったから。

自分も震えるほど寒がりなのに、マフラーを貸してあげるとか。


……あ。


気付くと何かしてあげられることはないかと、考えていた。

そこでふと思い出したのは、今朝母さんが渡してくれた使い捨てカイロ。


ポケットの中に手を伸ばすと、放っていたそれは結構熱くなっていた。

熱を少し逃すように振りながら近付いて、


「大丈夫?」


後ろから声をかけた。そして、


「はい」


振り向いた彼女に持っていたカイロを手渡した。