これから3年間通う同じ中学の制服を着た、女の子。
見たことのない後ろ姿だったけど、たぶん同じ新入生じゃないかと思ったのは、制服も鞄も全て新品に見えたから。
でも、それだけなら特に意識はしなかった。
新入生らしき人の姿は他にも沢山あったわけで。
その中で彼女に目がいったのは……隣に赤いランドセルを背負った小学生の姿もあったから。
小学生の子の方はまだ低学年っぽくて、姉妹なのかなとか勝手に考えた。
何にせよ、仲良く手を繋いで歩いている姿はあたたかくて、いいなぁと思った。
そして校門の前。
足を止め繋いでいた手を離すと、小学生の女の子は寂しそうで不安そうで、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
どうするんだろう……と、見ていると、
彼女は自分が巻いていたマフラーを外して、巻いてあげたんだ。
縮まっていた自分との距離。
「頑張れ、大丈夫。気をつけていくんだよ」
優しい声が聞こえ、優しい笑顔が見えた。
自分にはない……あたたかさ。
フワッと桜の花びらが混じる風が吹いて、瞬発的に心を奪われた。
だけど、それだけじゃなかった。
この気持ちを決定的なものにしたのは、この直後。



