だけど、どんなに後悔しても今さら元の輪に戻ることも、生き方を変えることも出来なくて……そのまま小学校を卒業。
そして、通常のステップ通り公立の中学へと進学した。
そこで……君に出逢った。
「母さんごめん。高校は絶対国立に行くから」
入学式の朝。玄関で母さんにそう告げると、少し動揺した顔をされた。
「なに言ってるの。翼の好きなようにしていいんだから……。あ、はいこれ」
せっかく決意を口にしたというのに、話を逸らすみたいに渡されたのは、もうすでに温まった使い捨てカイロ。
「お父さんは仕事で無理だけど、入学式にはお母さんが行くからね」
ニコッと向けられた笑顔。
……本当はがっかりしてるくせに。
心の中でそう呟きながら「うん」と頷き、家を出た。
ごまかせられればごまかせられるほど、自分が惨めで可哀想になる。
「別に寒くなんかないのに……」
4月になったばかりの風は確かに冷たいけど、心の冷たい人間にはちょうど良いくらいだ。
そんな皮肉じみたことを思いながら、ポケットにカイロを追いやった。
そのまま特に何かを考えるわけでもなく歩いていると、校門が見えてきたころに、ふと目についた人がいた。



