そうして遊びの時間や友達を捨てて、挑んだ中学受験。
結果はまさかの……不合格だった。
「仕方ないわよ、翼はよく頑張ったわ」
落ち込む自分に母さんは笑顔で励ましてくれたけど、
「……だめだったの」
夜遅く帰宅した父さんに報告しながら、ため息をついていた。
そして、それと同じころ。
卒業文集に載せる個人に宛てたクラスメートからのメッセージを、学校で書いていたときのことだった。
「何て書いたらいいかわかんないんだけど」
自分の名前が入った用紙を手にした女子が、そう声を上げた。
「どうして?」と、首を傾げ声をかける先生。すると、
「だって前原くんって、勉強ばっかりしてて冷たいんだもん!」
ムスッとした顔をして、言われた言葉。
少し前ならそれほど気にとめなかったかもしれない。
だけど、ちょうど受験に失敗したタイミングということもあり、その言葉はグサリと心の奥に突き刺さった。
自分はこれでいいんだ、間違っていないんだと思っていたけど、本当にそうだったんだろうか。
友達を失って、受験にも失敗して、挙句の果てには冷たいとまで言われて、何をやっているんだろう。



