止めどなく流れる涙でよく見えない。

だけど頭を押さえたままの前原くんの顔が、戸惑っているのだけわかった。


「ごめんね……」


今さらもう遅いよね。
もっと早くに声を上げるべきだった。

本当に本当にごめんなさい。


聞こえるか聞こえないかの声で謝った私は、震える下唇をぎゅっと噛む。すると、


「……は、なに? お前らがデキてるってあの噂、やっぱマジだったの?」


沈黙を破ったのは、前原くんを怪我させた男子。


「こんな根暗のどこがいいの? 望月さん、趣味悪すぎじゃね?」


ジリ……と、一歩近付いてきた男子に、私は反射的に後ずさる。


私に、女子に危害を加えるとは思わないけど、前原くんを怪我させた人。

怖くないと言ったら、それは嘘で……。


「望月さんさぁ……っ!?」

ガンッ!!


馬鹿にするような目で、私に何かを言おうとした瞬間、男子の身体は近くにあった机に勢いよくぶつかった。