何でよ。待ってよ。
みんなどうして何も言わないの……?
ゆっくりと上半身を起こす前原くん。
メガネは落ち、苦痛に顔を歪めたままなのに、みんな様子をうかがうだけで、手を差し出そうとする人は誰もいない。
そのとき、前原くんの腕をつたって、教室の白い床に赤い血が一滴落ちた。
濃い赤のその色は、昨日見た自分の血と同じ。
すりむいた私の膝を手当てしてくれたのは、前原くん。
その後も家まで送ってくれて、何度も「大丈夫?」って言葉をかけてくれた。
すごくすごく心配してくれた。
そんな誰よりも優しい人なのに、どうして……。
どうして前原くんがこんな目に遭わなきゃいけないの……?
みんなケガをすれば、赤い血が流れる。
男でも女でも、生きていればみんな一緒。
この人たちは自分の家族や友達、好きな人がケガをしたとき、笑うんだろうか。
痛みに顔を歪める姿を見ているだけなんだろうか。
……違う、違うでしょ。
私だって……違う!!



