言いたい、言えない、キミが好き。


恐る恐る目を開く。
すると私の目に飛び込んできた光景は、

頭を押さえて倒れた、前原くんの姿だった。

でも、それだけじゃない。


「ーっ……」


顔を歪め、押さえた指の隙間からは……真っ赤な血が流れているのが見えた。


「ひっ!」

「え、あっ、ちょっと!」


出血していることに気付いた女子たちが、次々に怯えた、焦った声を上げる。


「あ……」


突き飛ばした張本人も、さすがにヤバいって顔をしていた。だけど──。


「ちょっと押したくらいでこけんなよ」


え……?

もうひとりの男子が言った言葉に、耳を疑った。


ちょっと押したくらい……?
いや、そんな力の入れ方じゃなかったじゃん。

それに前原くん血が……ケガしてるのに。


「ほんとそれ。勉強のしすぎで足腰弱ってんじゃねーの?」


さっきまで焦った表情を浮かべていた男子も、まるで前原くんがちょっとこけたみたいに、はははと軽く笑う。