言いたい、言えない、キミが好き。



「……誰のせいだろうな」


ボソッと言ったのは田澤くん。

名前こそ出していないけど、視線の先……というか、教室に入ってきたばかりの3人の前には前原くんがいた。


嫌な予感が確信へと変わって、箸を持つ私の手が小さく震える。

……ううん、私だけじゃない。

たぶんクラスのみんな、これから起こることを予感していた。

だから、静まり返っていた。


視線だけを向けたあと、田澤くんはスッと前原くんの後ろを通り過ぎ、


「前原くーん……」


名前を呼んだのは、残った男子のうちのひとり。

そのままゆっくりと前原くんの真後ろに立つと、


「お前のせいで怒られてたのに、何で呑気に弁当なんか食ってるのかなぁ?」


ガタンッ!

前原くんの胸ぐらを掴んで、無理矢理立たせた。

そして、


「勉強しか出来ねぇネクラなくせに、ちょーしこいてんじゃねぇよ!」


大きな罵声と一緒に、前に突き飛ばされた前原くんの体。


思わず私は目を閉じた。

その瞬間だった。


ガッ!


鈍い音が聞こえて。


「きゃあっ!」


女子の悲鳴が響いた。