「明後日引っ越すけど進学のこともあるし、4月には自分だけ戻って来ようと思ってる。そしたら、そのときにまた……ちゃんと話させてもらってもいいかな」
「っ……」
優しく微笑んだ表情に、告げられた言葉の内容に、息が止まりそうになった。
何で私なんだろう。
嫌われたっておかしくないことばかりしてるのに、どうしてそんなに想ってくれるんだろう。
私は前原くんに何もしてあげられてないのに、どうして──。
「ふっ、えっ……」
頷くことさえ出来ず、ただただ泣きじゃくるばかりの私の頭を、前原くんはポンポンと撫でて「話が出来て良かった」と、呟いた。
それから私の膝に大きな絆創膏を貼ってくれて、もう外は暗いからと、家まで送ってくれた。
はっきり言ってしまえば、嬉しい。
前原くんに嫌われてなくて。それどころか、今もまだ大切に想ってくれていて、嬉しい。
でも、スッキリした気分にはほど遠かった。
心に積もったモヤモヤはそのままで、罪悪感は今もまだ胸の大半を占めていて……。
ふたりきりの時間は沢山あったのに、自分が何を伝えたらいいのかわからなくて……結局何も言えないまま、翌日を迎えた。
前原くんの最後の登校日──。



