言いたい、言えない、キミが好き。



部屋のいたるところに置いてある段ボール。

その側面には引っ越し業者の名前が印刷されていて、わかっていた。


わかってはいたけど……まさか引っ越しが、もう明後日だとは思わなかった。


引っ越す理由は、お父さんの転勤。

実は前々から決まっていたことで、先生にはあらかじめ話していたんだそう。

ただ、クラスのみんなには最終日まで内緒にしておいて欲しいと頼んでいたらしい。


だから最近図書室に行けなかったのも、引っ越しの準備で忙しかったからだと話してくれた。

それから……。


「今の状況で引っ越しとか、なんか逃げるみたいでカッコ悪いから、本当は望月さんにも最後まで黙っていようと思ったんだ。でも……やっぱりこのままは嫌で」


「だから、あんな手紙なんか残しちゃって……」と、続けた前原くん。


「変な誤解させて、ケガまでさせちゃってごめん」


きゅっと、ほんの少しだけ、抱きしめられる力が強くなった。