「ごめんっ! そんなに痛かった!?」
少し慌てた前原くんの声に、首を横に振る。
泣くほど痛いのは、膝の傷じゃなくて……心の方。
「何でこんなに優しくしてくれるの? 私、あんなにひどいことしたのに……」
都合よくなかったことになんて出来ない。
前原くんが優しくしてくれればくれるほど、何でもなかったかのように振る舞ってくれればくれるほど、罪悪感で胸の奥が苦しくなる。
付き合っていないとウソをついて、私は一番最低なかたちで裏切ったのに……。
ごめんなさいと謝ることさえずるく思えて、俯いた顔を上げられない。
すると前原くんは私の膝からガーゼを離して、口を開いた。
「望月さんだって優しいじゃん。俺が自殺すると思って、走って探してくれたんでしょ?」
──違う。
「そんなの、優しいなんて言えないよっ!」
他人の家なのに、思わず声を張り上げた。
優しさにしないで。
私の行動、全部優しさにしないで。
私はそんなに優しい人間じゃないのに──。



