言いたい、言えない、キミが好き。


***


「薬とかって、どこに片付けたかな……。ちょっと座って待ってて」

「あっ、はいっ」


前原くんに言われて、目の前にあったソファーにためらいながらも腰掛ける。

思わず他人行儀な返事になったのは、ここが前原くんの家だから。


学校から10分ほど歩いて。
辿り着いたのは大きなマンションだった。


「ここって……」

「安心して。母さんは出掛けてる予定だし、家には誰もいないから」

「そう、なんだ……」


それもそれで緊張するんだけど……と、エントランスでエレベーターを待ちながら顔を赤くした。

でも、そんな淡いドキドキは、前原くんが玄関のドアを開けた瞬間、消え去った。



「えっと……」


呟きながら、ガサガサと物を漁る前原くん。

私の座るソファーの前には、大きなテレビがあり、その隣には積み上げられた段ボールの箱がふたつ。

それだけじゃない。

少し視線をずらしたリビングのいたるところに段ボールがあって、その他には大きな家具と家電だけ。


生活感をあまり感じられない家。

その理由は、段ボールの側面に書かれた業社の名前でハッキリとわかってしまった。

そして、メモに書かれた言葉の意味も、同時に理解した。


前原くんは自殺するつもりだったんじゃなくて……。