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「薬とかって、どこに片付けたかな……。ちょっと座って待ってて」
「あっ、はいっ」
前原くんに言われて、目の前にあったソファーにためらいながらも腰掛ける。
思わず他人行儀な返事になったのは、ここが前原くんの家だから。
学校から10分ほど歩いて。
辿り着いたのは大きなマンションだった。
「ここって……」
「安心して。母さんは出掛けてる予定だし、家には誰もいないから」
「そう、なんだ……」
それもそれで緊張するんだけど……と、エントランスでエレベーターを待ちながら顔を赤くした。
でも、そんな淡いドキドキは、前原くんが玄関のドアを開けた瞬間、消え去った。
「えっと……」
呟きながら、ガサガサと物を漁る前原くん。
私の座るソファーの前には、大きなテレビがあり、その隣には積み上げられた段ボールの箱がふたつ。
それだけじゃない。
少し視線をずらしたリビングのいたるところに段ボールがあって、その他には大きな家具と家電だけ。
生活感をあまり感じられない家。
その理由は、段ボールの側面に書かれた業社の名前でハッキリとわかってしまった。
そして、メモに書かれた言葉の意味も、同時に理解した。
前原くんは自殺するつもりだったんじゃなくて……。



