「前原くんっ……」
涙と一緒に私の口から溢れた彼の名前。
でも、どんなに泣き叫んだとしても届かない。前原くんに私の声は届かない。
そう思っていた、のに──。
「望月さんっ!?」
え……?
何が起こったのかわからなかった。
呼ばれて顔を上げると、目の前に前原くんがいた。
どうして……?
帰ったんじゃなかったの?
状況が把握出来なくてポカンとする。
「ケガしてるじゃん」
前原くんはそう言ってしゃがむと、私の片腕にそっと触れて。その瞬間、思い出した。
「保健室に……」
「だ、だめ! 死んじゃだめ!!」
何か言いかけた前原くんの言葉を遮って、彼の腕をぎゅっと掴み、私は声を張り上げていた。
擦りむいた膝のことなんてどうでもいい。
たとえ放っておいたって、いつかは治るんだから。
だけど、死んでしまったら戻らない。
何もかもが終わりになってしまう。
「自殺なんかしちゃ、絶対だめっ……」



