言いたい、言えない、キミが好き。



梨花が彼氏のところに行ってくると言うから、私は図書室で勉強をして帰ることにした。

行けば色んなことを思い出すから躊躇したけど、家では勉強なんてはかどらないし、教室は残っている生徒でガヤガヤしてるから。

……なんていうのは建て前で、本当は少し期待していたんだと思う。


図書室に行けば、前原くんに会えるんじゃないかって。


だけど、来るはずがなかった。

塾に通ってるって言ってたし、放課後に行くなら市の図書館の方が多いわけで。


……教室で話しかけれないくせに、なにまた都合のいいこと考えてんだろ。


いつの間にか減っていった周りの人たち。

夕焼けに染まり始めた空を見て、私は開いた問題集をパタンと閉じた。


そういえば梨花、ちゃんと話出来たかな……。

自分のことを考えれば苦しくなる一方で、あえて梨花のことを考えながら、階段を降りた。


そして、玄関。

並んだ下駄箱の、自分の名前の前。

白いスニーカーに手を伸ばそうとしたときだった。