「え……」
箸を持つ手の力が、思わず抜けそうになる。
いじめられるようになったのは、私を好きだったから……?
「……それって、どういう意味?」
心の中で思ったそのままを、声に出して聞いてくれたのは朱里。
意味がわからなくて、ふたりして梨花をじっと見つめる。
すると梨花は、さっきよりも用心深く周りの人の姿を確認した後に、少し腰を曲げて私達だけに聞こえる声で言った。
「田澤と好きな人が被ってるからってこと。確かに前原は根暗っぽいし、見るからにいじめられそうだけどさ、黒幕は田澤っていうか……あいつに嫌われちゃったのが原因だと思うんだよね」
「……」
田澤くんも前原くんも、私のことが好きだったから……なんて、そんな自惚れたような仮説、とてもじゃないけど信じられない。
だけど、思わず言葉を失ったのは、私も梨花と同じことを思ったことがあったから。
黒幕は田澤くん。
彼がいじめの主犯格なんじゃないか……って。



