言いたい、言えない、キミが好き。


夏休み前、少し落ち着きつつあったいじめは、新学期からまた思い出したかのように再開された。

しかも、内容は以前よりも少しエスカレートしている。


さっきのこともそうだし、休憩中にわざと前原くんにボールをぶつけてみたり、とても見ていられないようなことが増えた。


何度もやめてと心の中で叫んだけど、実際に声には出来なくて……。

結局私も他のクラスメートと同じ。

あんなに仲良くしてたのに、好きだと思っていたのに、前原くんがいじめられる姿を見て見ぬフリしてしまっている。


ゆっくりと立ち上がって、倒れた机を直し、散らばったお弁当の中身に手を伸ばす前原くん。

その姿を見ているだけで罪悪感に押しつぶされそうになった私は、彼から目を逸らした。

そこに、


「さすがにあれはやりすぎ……」

「だよね」


小さく呟いたのは朱里で、梨花も苦い顔をして頷いた。そして、


「ちょっと思ったんだけどさ……前原がいじめられるようになったのって、実優を好きだったからじゃない?」


周りを気にするように声を潜めて、梨花が言った。