うそを……ついた。


前原くんと付き合ってなんかいないって、はっきりと言ってしまった。

それを、前原くん本人に聞かれてしまった。


……違うの。

前原くんのことを好きな気持ちは本当なの。

それなのにウソをついてしまったのは、朱里達を、友達を失いたくなくて……。

だから……。


ほんの十数秒。

頭の中ではぐるぐると、彼に対する言い訳を必死に考えていた。

だけど──。


「実優、大丈夫?」


ビクッ!

そっと肩に触れてきたのは梨花。

本来ならホッとするところ……な、はずなのに、私はドキッとして肩を振るわせた。

そんな私の様子に、キョトンとした梨花の目がゆっくりと動く。

視線が向けられようとした先は、前原くん。


「あ……」


何か勘ぐられた気がして、私は咄嗟に言葉を探した。でも、


「望月さん」


教室に響いた前原くんの声。


「迷惑かけて、ごめん」


優しく……微笑むようにそう言い残して、前原くんは教室を出て行った。