助かった……と、言っていいのかわからない。

現れた人が人なだけに、広がるのは複雑な気持ちばかり。

それに……。


チラッと向けられた田澤くんの視線に、気付きながら私はわざと目を逸らした。

すると、急いでいたのもあったんだろう。

そのまま何も言わずに田澤くんは出て行き、彼を追いかけるように、渡辺さんも教室を後にした。

そして、


「あ、ちょっと! 菜々子!」


何だか取り残されてしまったといった、渡辺さんの友達たち。


「……っ」


グループのリーダーを失った彼女らは、とってもバツの悪そうな表情を浮かべ、「行こう」と逃げるようにまた教室から出て行った。



「……」


さっきまでの騒動が、まるで嘘のように突然静まり返る教室。

残ったのは、私と朱里と梨花。

それから……前原くん。


苦手な人たちはみんな目の前からいなくなったのに、残ったのは大好きな人たち……なのに、全く心は休まらない。

それどころか、バクバクと強く脈打つ鼓動。

居心地がすごく悪くて、吐いてしまいそうな気持ち悪ささえも感じる。


その理由は、自分が一番わかってる。