や……やめて。
言い返すことも前原くんの顔を見ることも出来なくて、私はぎゅっと目を閉じた。
すると、
「望月さんは、あんた達と違って優しいから」
静かに、でも真っすぐ聞こえた前原くんの声。
え……。
驚いた私が目を開けると、
「は?」
明らかに苛立った声が、後ろから聞こえて。
「前原のくせに何言ってんの?」
一歩、こっちへと近付く気配。
ただならぬ雰囲気に、どうしよう……って焦った次の瞬間。
「……何やってんの?」
前原くんの立つ方とは反対側から、声をかけてきたのは……田澤くん。
教室にいた誰もが、まさかの人物の姿にびっくりした。
だけど、一番動揺したのはきっと渡辺さんだった。
「今日ミーティングあるって言ってなかったっけ?」
田澤くんに冷やかな声で言われた渡辺さんは、「あっ!」と声を上げ、
「みんな待ってる」
「ご、ごめんっ!」
慌てた様子で私達に背を向けた。



