「っ、じゃあ何で一緒に勉強なんかしてたのよ⁉︎」
渡辺さんの隣に立ったクラスメートが、焦ったように声を上げる。
「それは……」
嘘をつくのにいっぱいいっぱいで、そこまで考えていなかった私。
咄嗟には何も浮かんでこなくて、口ごもりかけた……そのとき。
「先生に頼まれただけだよ」
静まり返った教室に響いた声。
聞き覚えのありすぎる声にビクッとして、振り返ると……
教室の引き戸の前に立っていたのは、前原くんだった。
なん……で……。
まるで石のように固まる体。
目を見開いたまま、立ち尽くすばかりの私と目を合わせたあと、前原くんはすぐにパッと顔を逸らして。
「英語、苦手だから教えるようにって、先生に言われてたんだよ」
言いながら、目の前の自分の机から鞄を持ち上げた。
「は、何それ。先生に言われたからって、前原とふたりで勉強してたの? きっも!」
「頼まれたからってさぁ、前原と一緒に勉強しようと思う?」
背後から聞こえる罵声と、クスクスと響く嘲笑。



