これじゃ逆効果。
そう分かっているのに、どうにも出来ずにいると、


「チッ」


耳に届いたのは、舌打ち。

パッと目の前を見ると、田澤くんはすごく不機嫌そうで、迷惑そうな顔をしていた。

その表情に怯んで、足がすくむ。


私、何か怒らせちゃうようなことをしたかな。

怖い、どうしよう……と、更に焦っていると、


「お前、あんまりつまんねーこと言うなよ」


そう言って田澤くんがど突いたのは、冷やかしてきたクラスメート。
そして、私をもう一度見て、パッと目を逸らすと……、


「あ、おい前原。今日お前暇?」


私の後ろへ目を向けて、そう言った。


前原……。

その名前を聞いた瞬間、緊張が一瞬解ける。


振り返ってみると、教室の後ろに寄せていた机を元の位置へと運んでいた前原くんが、ちょうど私の真後ろに立っていて。


「俺も部活急ぐから。前原、お前代わりにやっといて」


田澤くんは一方的に言うと、前原くんの返事も聞かずに歩き出した。