「実優?」
一度口を開きながら、なかなか続きを言おうとしない私に、朱里が声をかける。
……私ね、前原くんのことが好きなんだ。
ずっとずっと言えなかったけど、今日こそ朱里と梨花にはちゃんと言おうって決めた。
親友のふたりには言おうと思った。
だけど……。
思い出したのは今日1日、渡辺さんの友達を中心に無視されたこと。
……怖かった。
まるでいじめられているようで、ちょっとしたことがすごく怖かった。
それでも、何とか笑顔で過ごせたのは、朱里と梨花がいたから。
ふたりがそばにいてくれて、味方してくれたから、大丈夫だった。
今も……こうして庇ってくれて、すごくすごく嬉しい。
私はふたりを失いたくない。
ひとりぼっちにはなりたくない。
いじめられたくない。
私は──。
「……うん、付き合ってない。前原くんと付き合ったりしてないよ」
自分で最低だと思った。
言いながら胸の奥が鋭くズキンと痛んだ。
それなのに、
「ほら、やっぱり!」
顔をパッと明るくして、勝ち誇ったように渡辺さん達を見る梨花。
朱里もまた同じで、そんなふたりの様子に心の底からホッとする自分がいた。



