“田澤くんに告白された”
それだけでもう、私は彼女に嫌われてしまっていて。
ただ単に私を困らせ、傷付けたいだけなんだ……。
「黙ってないで何とか言ったら?」
両腕を組んで威圧的な渡辺さんの声が、教室に響く。
「前原と付き合ってるわけないじゃん! ね、実優」
そう言って、私の腕をぎゅっと抱きしめたのは梨花。
ドクンッ。
疑うことなく私を真っすぐ見る、ふたりの眼差しが突き刺さる。
……言わなくちゃ、本当のこと。
朝、前原くんと勉強していることも、付き合っていることも、
渡辺さん達が言っていることは……全部真実なんだって。
「わ、私は……」
腕を抱きしめる梨花の手に、空いた片方の手でそっと触れ、私は本当のことを言おうとした。
……でも。
真実を言ったら、ふたりはどんなを顔するだろう。
だって目の前のふたりは、私が前原くんと付き合っているだなんて、きっと少しも思っていない。
だからこうして、渡辺さん達に言い返してくれているわけで……。
もし、私が本当に前原くんと付き合ってるって言ったら……?
間違いなく、今のふたりの立場はなくなる。
そしたら、ふたりは私のことをどう思うんだろう。
本当のことを言ったら、ふたりは……。



