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「……」
返却されたばかりのプリント。それを見ながら教室へと戻るため、私は廊下を歩いていた。
まさか自分の進路のことを言われるとは、思ってもみなかった。しかも、もう少し上を目指したら……なんて。
どうしよう……。
もう少し上っていうと、あの高校でもいいのかな……?
近所のお姉ちゃんが通っていて、憧れていたセーラー服。
その制服に腕を通す自分を想像して、何だか照れくさい気分になった。
すごいな……前原くんは。
正直言うと、今日の休み明けテストでは、私自身も手応えを感じていた。
田澤くんのことや渡辺さんのことで、100%集中することは出来なかったけど……それでも、以前とは比にならないくらい、スラスラと問題が解けた。
それは、間違いなく前原くんのおかげ。
夏休み前から今日まで、前原くんが教えてくれたから……。
学校が始まって今日1日。
あまり良いことがなかった……っていうか、むしろ悪いことばかりで、すっかり落ち込んでいたけど、最後の最後で良いことが起きた。
先生に褒められたこと、もう少し上を目指そうと言われたこと、早く前原くんに伝えたい。
早く“ありがとう”が言いたくて、私は足を急がせた。
なのに──。



