体の前で重ねていた手を、ぎゅっと握る。
たぶんこれから怒られるんだ……。
だって、前原くんの志望校はとんでもなく偏差値の高いところ。
合格出来たらかなりすごいことだし、先生が応援しないわけがなくて、『邪魔しないであげて』って、言われるんだと思った。
そしてそれは、私自身も少し心配していたことで、反論出来ないっていうか……怒られちゃっても仕方ないと思った。ところが、
先生が私の前に差し出したのは、前原くんの進路希望調査表ではなく、自分のもの。
最も、他人の進路希望を軽々しく見せることはしないと思うけど……でも。
「望月さんの進路は、本当にこれでいいの?」
「え……」
先生の問いかけは予想もしなかったもので、私は思わず目を丸くした。
「いや、だって勉強してるんでしょう? てっきり少し上を目指すんだと思ってたんだけど……」
そう言って先生が目を向けたプリントには、自分の学力からしたら無難な公立高校の名前。
とは言っても、毎年定員割れしているわけでもないし、受かるかどうかもまだわからないわけで、妥協してるとかそんなつもりはない。
それなのに……
「望月さんは英語がなぁ……って、先生も思ってたんだけど、今日の休み明けテスト、よく出来てた。このまま頑張れば、もう少し上も目指せると思うの」
ペラッと小さな音を立てて、先生はプリントを再度私の前に差し出した。
「もう一回、考えてみてくれる?」



