言いたい、言えない、キミが好き。



「大丈夫?」

「菜々子って田澤のことが好きだったんだね」


廊下を歩きながら、朱里が声をかけてくれ、一歩前を進みながら梨花が言った。


田澤くんがクラスの中心の男子ならば、女子は渡辺さん。

明るくハキハキとした性格で、リーダーシップに溢れてて、野球部のマネージャーも務めていることから、田澤くんとは仲が良かった。

それこそ、実は付き合っているんじゃないかって噂を聞くくらい。


だから渡辺さんが田澤くんに好意を寄せていることには驚かなかったけど、まさか自分が彼女に疎まれる存在になるなんて、思いもしなかった。


でも、田澤くんに告白されたって、そういうことだ。

信じられなくて、今日の今日まで何かの冗談だと思っていたから考えもしなかったけど、彼のことを好きな女子は沢山いるわけで。

そんな彼に告白されたと聞けば、当然疎ましく思われる。


「まぁ、菜々子が相手となると、ちょっと面倒くさいね。……もしかして、だから? だから田澤とは付き合わないの?」

「え?」


くるっと回って、こっちを向いた梨花。

私が返事するより先に、


「気にすることないよ! 何か言われたりされたら、あたしが菜々子に言ってあげるから!」


両肩をぎゅっと掴んで、そう言ってくれた。