梨花は私の前からスッと離れて、


「わたし先に帰るから、実優と日誌書いといて」


校内の清掃から教室へ戻ってきた田澤くんに、笑顔でそう告げたのだ。


「ちょ……っ!」

「じゃあねー」


私が引き止めるよりも先に、教室を出て行く梨花。


「……」


残された私と目を合わせたのは、キョトンとする田澤くん。


「あ、えと……」


……気まずい。
どうしたらいいんだろう。

梨花みたいに、男女関係なく気軽に話が出来る性格だったらいいのだけど、男子と話すのは少し苦手。
しかも、田澤くんみたいなタイプが、実は一番苦手っていうか……。

上手く言葉がまとまらず、そのまま黙り込んでしまっていると、


「え、なに?もしかして望月さん、亮輔のこと……?」

「へっ!?」


田澤くんの隣にいたクラスメートの男子が、あろうことか勘ぐって冷やかしてきた。


「ち、違うっ!そういうわけじゃなくて!」


必死に否定しようとする。
だけど、恥ずかしさから顔が赤くなる。