「ちょっとトイレ行ってくる!」
私は逃げるように、教室を飛び出した。
「あっ、待て!」
すかさず追いかけてくるふたり。
話したくないわけじゃないんだってばー!
心の中で叫ぶけど、追いかけられると逃げたくなってしまう。
とりあえずトイレまで行こう!
そこで落ち着いて話そう!
そう決めた私はとりあえず走り続けて、女子トイレの手洗い場へと入ろうとした。
だけど、
足を踏み入れようとした直前で止まる。
だって……。
「ああ、望月さん?」
不意に聞こえてきたのは、自分の名前。そして、
「そうそう!あいつマジでムカつくんだけど!」
続けられたのは、悪意に満ちた言葉。
それほど親しくない人なのに、声で誰だかすぐわかったのは、さっき気にしていた人だったから。
「ぼけーっとして天然ぶってさぁ、あれ絶対計算だよね」
「うんうん、田澤くんも騙されてるんだよー」
「菜々子の方が絶対お似合いだし!」
本人が聞いているとも知らず、次々と浴びせられる言葉。
菜々子っていうのは渡辺さんの名前で、会話の内容から、どういうことなのか容易に理解出来た。
それから……。



