えっと消しゴムは……。
ポーチ型のペンケースの中をガサゴソと探って、見つけた消しゴムを取り出すと、誤字を消そうとした。ところが、
「あっ……」
変に手に力が入って、落としてしまった。
弾むようにして転がった消しゴムは、斜め前の席に座る女子のかかとにぶつかって止まった。
チラッと足元を確認するクラスメート。
「渡辺さ……」
椅子の下まで手を伸ばすのも何だし、拾ってもらおうと声をかけようとした。
だけど、その瞬間。
渡辺さんは私の落とした消しゴムを、つま先でポンと蹴った。
えっ……。
軽く飛んで更に転がっていった消しゴムは、随分と前にいってしまって、もう手なんて届かない。
確かに消しゴムに気付いてくれたような気がした。なのに……。
何だか、ざわざわする心の中。
いやいや、足がぶつかっただけだよね……。
言い聞かせるよう思っていると、授業の終わりを知らせるチャイムがちょうど鳴った。



