言いたい、言えない、キミが好き。


***



「校長先生も言われてたけど、3年生にとってこれからの時期はとっても大事なものになります!」


始業式が終わって、体育館から教室へと戻ってきた、残りの時間。

担任の先生が一枚のプリントを配ってから、いつになく真面目な顔で、声を張り上げた。


回ってきたばかりのプリントに目をやれば、一番上に書かれた文字は『進路希望調査』。

これからの時期が大事だって理由は、受験が関わってくるからだって、嫌でもわかる。


「夏休み前にも話しましたが、今の段階で考えているところを書いてください」


先生の言葉に合わせて、一斉にペンケースを開く音が教室に響いた。

私もシャーペンを一本取り出す……けど。


中学を卒業して、春から通いたい高校……か。

正直、そんな先のことよりも、私の頭の中は今起きていることでいっぱい。


あと数分で終わる授業時間。

休憩になったら、また朱里達に囲まれるんだろうなぁ……。何て答えようかなぁ……。

なんて、他のことを考えていたものだから、第一希望の公立高校の名前さえ間違えて書いてしまった。