「……わかった」
そう言われたら、頷くしかなかった。
だって、前原くんが傷付けられる姿をもう見たくはない。
「ありがとう」
ホッとしたように微笑んで、前原くんは私の手を離し、図書室を出ようとした。それを、
「でもっ!」
私はまた掴み直し、引き止める。
前原くんのためにも、私達の関係は内緒にしておいた方がいいのかもしれない。だけど……。
「朱里たちにはちゃんと言う……言わせて!」
勢いあまって大きくなった声は、図書室中に響いた。
恥ずかしくなって俯くけど、言ったことには後悔はしていない。
せめて朱里たちには、親友と呼べる友達ふたりには、本当のことを話したい。
じゃないと、こうして前原くんと一緒にいる資格なんて、私にはないような気がした。
「望月さん……」
少し驚いたような声で、呼ばれた名前。
顔を上げると、前原くんは声の通り目を丸くしていて。
だけど、私と目が合うと困ったような……でも、嬉しそうにも見える微笑を浮かべ、
「無理はしなくていいから」
私の背中をそっと押して、抱き寄せた。



