だけど梨花は「えっ!?」と、信じられないといった顔をして、「本気で言ってるの!?」と、声を荒げた。

本気で……って、


「どういう意味?」

「気付いてなかったの?ってことだよ!」


声と一緒に両手で頬を挟まれ、強制的に回された首。

向けられた先は、綺麗に消された黒板で……言いたいことはすぐに分かった。


黒板の右端に書かれた、6月24日という今日の日付。

その下には『日直』と書かれていて、梨花の苗字ある『山本』の文字。

そしてその右隣には……『田澤』


「……だから、何回言ったら」

「大丈夫!礼には及ばないから!」


にっこりと満面の笑顔で、頬から下ろした手を、私の肩にポンっと乗せる梨花。

こりゃダメだ……。

諦めたつもりじゃないけど「はぁ」と、思わずため息をついた。その隙が失敗だった。


「あっ、おーい!田澤!」


突然、目の前の梨花が声を張り上げ、ビクッとしたときにはもう遅かった。