楽しい時間はあっという間。
話したいことが沢山あって、前原くんともっと一緒にいたくて、いくら時間があっても足りそうになくて、何だか落ち込む。
でも……。
思い出したら、自然と顔がにやけちゃう。
まさか前原くんも同じだとは思わなかった。
同じ入学式の日に、お互いを意識していたなんて……。
両想いだったことすら奇跡みたいに嬉しかったのに、運命とか感じずにはいられない。
嬉しくて、幸せすぎて、
「望月さん」
「ん?」
名前を呼ばれた私は、とってもユルい顔を向けてしまった。すると、前原くんはキョトンとした後に苦笑して。
「教室ではいつも通りでいいから」
何でもない顔をして、そう言った。
「え……」
いつも通りでいい……それって、お互い話しかけたりしないってこと?
私が考えているうちに、前原くんは鞄を肩に下げ、鍵を持つ。そして、図書室の出入り口へと向かって歩き出した。
「待って! ダメだよ、そんなの……」
私は慌てて腕を掴んで引き止める。



