そっか!だから寒がっていると勘違いされたんだ。
頭の中で経緯が一本の糸のように繋がり、
「あのね、あのときねっ……」
ずっと言いたかったお礼と、私が前原くんのことを好きになった、最初のきっかけ。
そのふたつを興奮気味に伝えようとした。
ところが、
キーンコーンカーンコーン。
ふたりだけの図書室にはうるさいくらい、響き渡ったチャイムの音。
「あ……」
前原くんが時計を見ながら声を漏らす。
いつの間にか、教室に戻らなきゃいけない時刻になっていた。
「気になるけど、続きは後にしよっか」
「うん……」
優しく言う前原くんの言葉に頷く。
本当は今すぐにでも言っちゃいたいけど、図書室の鍵を返しに行ったりしなきゃいけないもんね……。
前原くんは手にしていた本を棚へと戻して、私達は少し急いで机まで戻った。
そして、広げたままにしていた勉強道具を慌てて片付ける。



