自分の勇気のなさに、小さくため息をついた。
時間はただ静かに進んでゆくばかり。
このまま何も聞けずに終わってしまいそう……と、肩を落としたとき。
ガタンッ。
「っ⁉︎」
静かすぎる空間に、突如響いた音。
物思いにふけっていた私はびっくりして、思いっきりビクッとしてしまった。
「ごめん」
謝ったのは前原くんで、立ち上がった姿に、さっきの音はただ椅子を引いた音だと知る。
「う、ううんっ!」
何だか恥ずかしいと思いながら首を横に振ると、前原くんはクスッと笑った。そして、
「調べ物してくる」
「あ、うん……」
私を残して、本棚の並ぶ方へと歩いていってしまった。
ほんと、前原くんはいつもと何も変わらない。
ドキドキそわそわしてるのは、私だけのような気がする。
……って、いうか。
こうも何も変わらないと、あのときの出来事が夢みたいに思えてくる。
もしかして本当に夢だったりして……。
いやいや、そんなはずないよ!
だってまだはっきり覚えてるもん。
でも、じゃあ何で前原くんは何も言ってこないの……?



