「うそ……」
「嘘じゃないよ。優しい望月さんのことが、ずっと前から好きだった」
「っ……!」
前原くんの言葉に胸がつまる。
予想していたのが逆の展開だっただけに、とても信じられなくて、両手で口元を抑える。
そして小刻みに震える、自分の体。
「ごめんね、急にこんなこと言って」
前原くんの口調は、そんな私をそっと撫でるように優しくて。
私はふるふると首を横に振った。
そして、やっと理解する。
前原くんが私の告白を遮った理由。
私からじゃなくて自分から、好きだと言ってくれたんだ。
「ありがとうっ……私もだよ……」
嬉しくて嬉しくて、泣きながら何とか口にしたそれは、震えて消えてしまいそうなか弱い声だった。
だけど、小さな足音を響かせながら、前原くんは歩いてきてくれて。
「嬉しい」
私の身体を優しく抱きしめてくれた。
月明かりだけが照らす、暗い夜の山道。
不気味で怖くて嫌だったはずなのに……ずっとこの場所にいたいって思っていた。
前原くんとふたり、今このときで時間が止まればいいのにって、本気でそう思った──。



