それは私が口しちゃいけない言葉。

だって……言えてない。


他人の目ばかり気にして、親友だと思っている朱里や梨花にすら、前原くんを好きだと言えてない。

それどころか、ホッとしてしまった。

図書館で勉強したとき、見かけた女子が梨花じゃなくてホッとした。


こんな私に、好きだと言う資格はない。


……わかってる。
わかってるよ。だけど──。


「あのね、さっき言おうとしてたことなんだけどっ……」


自分がどんなにずるいことを言おうとしているかわかっている。

だけど、ほんの少しでも気持ちを誤解されてしまうのは嫌だった。


「手、握ってくれたの、嫌だったんじゃなくて嬉しかった! びっくりしちゃったけど、嬉しかったの!」

「……」


私を見る前原くんの目は、真ん丸。

それは私の発言に対してなのか、私が泣きそうな顔をしているからなのか、どちらかわからないけど……。


「だって私ね、私──」


前原くんのことが好きだから。

とうとう告げてしまおうとした……そのとき。