「田澤くんは本気だと思うよ」


前原くんの静かな声が、響いた。

私は「え……?」と、思わず目を大きくする。


「田澤くんは本気だよ」

「……」


逸らした目を私に向けて、真剣な眼差しで言った後、前原くんは背中を向けた。

そして、ザク、ザク……と小さな足音を立てて、歩いていく。


田澤くんは本気……って、それはどういうこと………?

本気だから、真剣に考えてあげてってこと……?


どうして前原くんがそんなことを言うんだろう。

胸の奥が締め付けられるみたいに、きゅうっと苦しくなる。


こんなの私の勝手だけど……前原くんにはそんなこと言って欲しくなかった。


だって私は……。

私が好きなのは──。


「前原くんっ!」


気付いたときには名前を呼んでいて、前原くんは振り返った。


「あのっ……」


脳裏をよぎったのは、『好き』の二文字。

だけど、口にする寸前で止める。