言いたい、言えない、キミが好き。


自覚すれば苦しくて、ふるふると首を横に振るのが精いっぱい。

そんな私にもう一度微笑んで、


「帰ろう。送るよ」


前原くんは、空いていた私の片手を取った。


「えっ……」


繋がれた手にドキッとして、思わずこぼれた声。

もちろん嫌なんかじゃなかった。
むしろ嬉しかった……のに、


「あ、ごめんっ」


前原くんは慌てて、私の手を離してしまった。そしてそのままフイッと、背を向けて歩き出した。


「あっ」


勘違いさせてしまったと焦った私は、前原くんを追いかけて呼び止めようとする。だけど、


「「あのっ」」


Tシャツの裾を掴んで、声をかけたその瞬間。

前原くんはクルッとこっちに振り返って、お互いの声が重なった。


「わっ、ごめん!」


思いがけず近付いた顔に、今度は私からパッと離れる。


「いや、こっちこそ……。で、何?」

「あ、えと……前原くんこそ何?」


さっきの誤解を解こうとしていたはずなのに、急には出てこなかった言葉。