とても簡単に解決する手段があったのに、こんな所まで必死に走って来ちゃった。
恥ずかしくて口をパクパクさせながら、顔を真っ赤に染める。すると、
「ふっ……」
目の前の前原くんが、小さく笑った。
「ば、馬鹿だって思ってる?」
「ちょっとだけ」
あまりに素直な答えに、漫画ならガーンッて言葉が私の上に乗っかってる。
あぁ……やっぱり……と、ショックを受けていると、
「でも、嬉しかった。望月さんが来てくれて嬉しかったよ」
「ありがとう」と続けて、前原くんは優しく微笑んだ。
その瞬間、胸の奥から熱くなる。
さっきまで怖くて怖くてどうしようもなかったはずなのに、ひとりじゃなくても怖かった道なのに……今は全然怖くない。
私の目に映って思考を奪うのは、前原くんの笑顔だけ。
もし、スマホで連絡が取れることに気づいていたとしても、私はきっとここまで走ってきていた。
だって私……この笑顔が見たかった。
前原くんに会いたかった──。



