「相手はどんな人なんだ?」
「優しくて明るい人。少し男勝りな部分もあるんだけど、それ以上に繊細。それでなにより、寛大な人」
「へえ」
声を返しながら、潤は頭に浮かぶ七瀬の顔に苦笑する。確かに彼女は暗い性格ではない。しとやかというより男勝りでもあるが、潤は彼女の繊細で寛大な部分を知らない。
その割に、誰が図太くて器が小さいですって、などと聞こえてきそうだが。
「おれは確かに、その人のことが『好き』。会えるだけで嬉しいし、姿を確認できると幸福感が湧く」
へえと返して、潤は自分にそんなことを思える人間がいない事実に苦笑する。人間、皆同じようにしか思えないのだ。どこかしらになんらかの形で愚かな部分を持った生き物――それが彼の見る「人間」だ。
「その相手、かわいいのか?」
「背が高い」
えっ、と声が出そうだった。七瀬も長身で、自分と五センチメートル変わるかといった程度に潤には見えている。
「百六十四センチ」十織は当然のように声を並べた。
「へえ。ずいぶん正確なんだな」
「おれ、人の身長わかるんだ」
ええ、と潤は素直に声を返した。
「気持ち悪いな、お前」
「露木君もわかるよ」
「わかんなくていいし」
「百七十一くらい?」
「一センチ単位で見抜いてんじゃねえよ」
「体重は五十八くらいかな」
「お前大丈夫? 結構本格的に気持ち悪いけど」
「当たり?」
「絶対女子の身長体重見抜くなよ。なにがあってもだ」
「わかるものはわかるんだよ」
十織は潤の前に自身の手を差し出した。
「手、ってわかるでしょう? 自分のじゃなくても」
「……まあな。間違ってもこれと同じとか言うなよ」
困ったな、と十織は眉を下げて笑う。