透明な海



白地に青で雪の結晶が描かれた氷嚢に適量の氷と水を入れ、塩とタオルを持って戻った。

「うつ伏せになれるか」

「あらやだ、なにするつもり?」

「応急処置」ねっとりと言った。

「背面でなにをさせるつもりだ」

静香は潤の声を聞いていないように、ゆっくりとうつ伏せになった。

潤は彼女のティーシャツの上にタオルを置き、その上に氷嚢を置いた。

「……冷たさ感じる?」

「もうちょっと冷たくていい」

「一つずつ試すからな」

そう宣言して、潤はタオルをベッドに置いてティーシャツ越しに氷嚢を置いた。

「……あと三段階あるけど」

「これでいい。結構楽になるもんだね」

「お兄様の知識量に感謝するがいい」

静香は「はいはい」と呆れたように言ったあと、「ありがとう」としおらしい声を続けた。

なんだかくすぐったくなって、潤は「別に」と短く返した。

「寝られそうなら寝ていいぞ」

「そしたら潤はどうするの」

「……寝る。眠くなったら」

「絶対嘘だ」

「いいんだよ。兄姉(けいし)なんて弟妹(ていまい)が困ってるときにしか仕事ねえんだから」

「なんだ、おかしいだけの人じゃないんだね。潤も」

「こんなんでも生まれてくる家は間違ってないと思ってる」

「へえ?」

「とりあえず最低限の常識は刻まれてるからな」

「お母さんたちも安心だね」と言う背中にどういう意味だと言おうとしたが、「そうだといいな」と返した。