透明な海



「そういえばさ、潤ってニョッキ知ってる?」

「……日記なら」

「ニョッキ。パスタの一種みたいなんだけど、食べてみたいの」

潤は蜂蜜レモンを一口飲んでマグカップを戻した。

「普通のパスタでよくね?」

「だって食べてみたいんだもん。友達にね、小金持ちの女の子がいるの。その子がこの間食べたらしくて。自慢げに語ってきたの」

「いつの間に虫が友達になったんだ」

「わたしが言ったのは小金持ち。潤が言いたいのはコガネムシ。そんで、そのニョッキを作ってほしいの」

「小金持ちが食べるような料理は作れん」

「調べてみたら、じゃがいもで作れるらしいの。じゃがいもならこの間お母さんが箱で買ってたし、パスタソースもあるし、作れない?」

潤ははあと息をついた。

「わかったよ。トマトもいくつかあるみてえだし、ソースも作ろう」

「すごい、潤ってパスタソースも作れるの? ていうかパスタソースって作るものなの?」

「作れるからあるんだろう。そんなに難しくもないよ」

「へえ、潤ってたまにすごいところあるよね」

「もっと言って『たまに』を帳消しにしろ」

「本当にちっちゃいこと気にするよね」

器の小さな男はモテないぞと言う静香へ、余計なお世話だと潤は返す。