蝉の声を響かせる輝かしい青を見上げた。
「……見事に夏だな」潤は苦笑した。
「いいね」
「どうした。暑さで頭おかしくなったか」
「日本だけだよ? 一年の間にこれだけ気候が変化するのは」
「変化しすぎじゃね? もうちょっとマイルドに変われねえのかな。夏と冬の差やばいだろ」
「確かに最近はすごいかもね。最近の夏の平均気温なんて、しばらく前じゃ想像もされてなかったみたいだから」
「な。親が度々そんなこと言ってる。……つうか、なんでおれらこんなところにいんの?」
言ったあと、犬の呼吸と人間の足音が背後を通った。
「なんで土手?」
「あっ、露木君土手だめだった?」
「土手に拒絶反応とか別に示さねえけど。なんで男二人で灼熱さんさんの土手に座んなきゃいけねえんだべ?」
「暇でしょう?」
「確かに昨日もそう答えたんだけど。でもなんで土手に」
「おれ、土手好きなんだ」
「お前の好み知らねえし」
「どこか行く?」
「とりあえずもうちょい空気の温度下げてほしいとは思う」
「そっか」
「つか、宿題終わったんだけど、おれ」
「おれも終わった」
「優秀かよ。いやそうじゃなくて。悪いけど、もう一緒にいる必要がないっつうか」
そう言わないでよ、と十織は苦笑する。
「おれ、友達いないんだって」
「知らねえし。いや、想像はできるんだけど」
「だからさ。露木君と友達になりたいなって」
「はあ? おれ、お前と違って人間好きじゃねえんだけど」
「嫌い?」
「好きか嫌いなら迷わず」
「なんで嫌いなの?」
どきりとした。「あっぶねえ」と潤は苦笑する。
「危うくお前のペースにごっちゃごちゃに巻き込まれるところだったわ。全部話すところだったっつうの」
「そうか。話したくなければいいんだけど」
潤は一度深呼吸した。