透明な海



潤は携帯電話を確認した。苦笑してから一時間弱が経過していた。

飽きたと密かに呟き、目が合った十織の前に広がる書籍を覗き込む。

「……どうした?」

「優秀な学校の生徒さんはどんな問題解かされてんのかなって。好奇心ってやつ」

「大きな違いはないと思うよ」

「さあな。おれ、こんなの解ける気しねえぞ? なに、これ理解してんの?」

「ある程度は」

「何者だよ。学者でも目指してんの?」

「いやあ、将来の夢は特にないよ」

「へええ」

「おれにできる範囲ならそっちの宿題教えるよ」と言う十織へ「厳しいのは嫌いだ」と返す。

椅子に座り直して伸びをしてシャーペンを握る。

「もうなんも書かずに出そうかとすら思うよな」

「後々面倒なことになると思うよ」

「どうせ説教と謝罪文的なことだろ? いっそ何枚かの原稿用紙汚す方が楽なんだけど。大した学校じゃねえし、それっぽいこと書いておけば許されるだろう」

「露木君、作文得意なの?」

「まあ、理数科目よりは文系科目の方が」

「へええ、すごいね。おれは文系科目あまり好きじゃないから」

「理数科目の方が好きなのか? はああ、優秀だねえ」

「学問の得意分野で優劣は決まらないと思うよ」

「まあなあ……」

「少し気分転換したら? 休憩も大切だよ」

「馬鹿は休憩からお勉強モードに戻れないんだよ」

「まあ、それならそれでいいんじゃないかな。好きなことをすればいいと思うよ」

「見捨てよった」

そんなことないよと十織は苦笑した。

「思ったことを言ってるだけだよ」と同じように続ける。