潤はシャーペンを回した。
「お前、趣味とかあんの?」
「趣味? 趣味は……植物育てたり。あと……」
人間観察、と十織は苦笑した。まじかと潤も同じように返す。
「人間観察が趣味なやつとか初めて遭遇したわ。それ公言しちゃうやつも」
「生き物が好きなんだ」
「生き物?」
「生き物ならなんでも」
「虫とか?」
「かわいい」
「微生物とか?」
「愛おしい」
「ええ……」
「生き物の、生きてる姿がたまらなく愛おしくて」
潤はまた一度、シャーペンを回した。
「……お前、前なんかあったの?」
潤が呼び起こしたように、喧騒の一部に静寂が訪れた。十織はそれを、「え?」と払う。
「……なんで?」
「いや。なんか、やたら生きることに執着があるようだったから」
「……執着、か。執着はないかな」
「死ぬの、嫌じゃないのか?」
「さすがにそれを望んではいないけどね。でも、それを迎えるのが自然なら別に。安らかなものがいいけどね」
「へええ……」
「露木君は?」
「え?」
「趣味。なにかある?」
「ああ……」
趣味か、と潤は苦笑し、同じように「なんだろう」と続けた。
「ああ、読書かな」
「へえ、いいね」
「疑問があるんだ。そのヒントが得られるかもしれないと思って文学に飛び込んだんだが――」
それらしいものはなにも、と潤はかぶりを振った。
「へえ。その疑問ってなんなの?」
「いや……他人様に話すようなことじゃ」
「そうか。もし気が向いたら教えてよ」
「普通の人じゃ疲れるような内容だぞ」
「おれ、あまり普通って言われたことないから大丈夫かもしれないよ」
「ああ……。じゃあまあ、気が向いたらな」
今は宿題片付けねえとと苦笑して、潤はシャーペンを握り直した。



